トレタ データサイエンス研究所

Report
2018年9月21日

TV番組による店舗紹介が消費者の予約行動に与える影響

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1. 問題意識

テレビ番組では、様々なレストランの紹介が日常的になされていますが、それが消費者に与える影響はどの程度のものでしょうか。 本稿では、株式会社エム・データと株式会社トレタの蓄積しているデータを利用して、番組による店舗の紹介が、消費者の予約行動にどのような影響を及ぼすのかを調査します。

2. データの説明

今回使用したデータは株式会社エムデータの所有するTVメタデータと、株式会社トレタの所有する店舗 データ及び予約データです。 TVメタデータとは、番組やCMの放送内容について詳細に記録したデータです。このデータには店舗紹介 以外のデータも含まれていますが、本分析においては、TVメタデータの中でも、特に店舗紹介データを利用しました。

一方、トレタの所有する店舗データや予約データには、トレタのアプリケーションを導入している全て の店舗の店舗情報や、過去の予約情報が含まれています。また、トレタのデータに含まれる予約情報に は2種類あり、それぞれの予約情報を「予約記入日」、「予約来店日」と呼ぶことにします (トレタのデ ータベースでは、それぞれ、created_at, start_atとして区別されています) 。「予約記入日」は、予約の連絡がなされ、受理された時点を表し、「予約来店日」は記入された予約通りにお客様 が来店したタイミングを表します。したがって、データ中に含まれる、特定期間内の「予約記入日」の 数は、その特定期間内に予約が受理された数を表し、「予約来店日」の数は、予約通りにお客様が来店 した数を表します。消費者が刺激を受けてから、来店に至るまでの過程の中で、どのように「予約記入日」、「予約来店日」が位置づけられるかを模式図にして表しました (下図) 。

3. データ整形

今回、データ整形とデータ分析の段階においてJupyter Notebookを使用しました。 具体的には、2017年12月から3か月分のTVメタデータと、トレタの所有する予約データをマージ、整形し、 店舗毎に、放送終了から i (i = 1, 2, 3,   …, 7)  週間後における予約人数増加率 (以後R+iと表現します) を得ました。ここで、番組放送1週間前の予約人数をN-1, 番組放送i週間後の予約人数をN+i (i = 1, 2, 3,  …, 7), 番組放送i週間後の予約人数の増加率をR+iのように表現すると、 R+i = N+i/N-1 のようになります。つまり、予約人数の増加率は、常に店舗紹介の1週間前の来店人数を基準にして計算されています。ここで、N+iやN-1は参照している週に属する各日の来店人数の総和であることに注意してください。例えば、週6日営業の店舗のN-1は、店舗紹介があった週の週番号の1つ前の週番号をもつ週の各営業日の来店人数の総和になっています  (つまり、1週間の内、営業日である6日間に来店した人数の合計ということです) 。 また、「予約記入日」に注目した集計と「予約来店日」に注目した集計の2種類を行うことで、 異なるR+iを得ました。例えば、「予約記入日」に注目した場合の最終的な整形結果は図のようになっています。

また、このデータ (2018年度のデータ) 以外にも、比較用に2017年度のデータも整形しました。 前年度の同時期の店舗に対して、2018年度のデータに対して適用したものと同じデータ整形を行い、 各期間に対応する予約人数増加率を得ました (下図) 。

これは、店舗紹介のあった年 (2018年度) と店舗紹介のなかった年 (2017年度) の比較を行う為です。

4. データ分析

「予約記入日」に注目した場合、横軸にi  (店舗紹介からの経過週数)、縦軸にR+i (店舗紹介から1週間前を基準としたときのi週間後の来店人数増加率) の平均をプロットすると図のようになります。


plt.plot(rate_mean_list_2018, color = "red")
plt.plot(rate_mean_list_2017, color = "green")
plt.xticks([0, 1, 2, 3, 4 , 5, 6], [1, 2, 3, 4, 5, 6, 7])
plt.show()

「予約来店日」に注目した場合についても同様にプロットすると図のようになります。


plt.plot(rate_mean_list_2018, color = "red")
plt.plot(rate_mean_list_2017, color = "green")
plt.xticks([0, 1, 2, 3, 4 , 5, 6], [1, 2, 3, 4, 5, 6, 7])
plt.show()

これらの図から、2017年度に比べて2018年度の平均予約人数増加率が増加していることが分かりますが、これらの増加が統計的に有意なものであるかを確かめる為に検定を行います。

具体的には、店舗紹介がされた各店舗の2018年度における予約人数増加率の平均 (以後、μ2018と呼びます) と、 同店舗の2017年度 (店舗紹介がされる1年前) における予約人数増加率の平均 (以後、μ2017と呼びます) の差を検定しました。 帰無仮説と対立仮説は以下のようになっています。

帰無仮説:μ2018 = μ2017

対立仮説:μ2018 > μ2017

店舗紹介の効果は、正の効果をもたらすことが期待されるため、今回は片側検定を行いました。 また、データに正規性を仮定できないこと、及びサンプル数がそれほど多くないことから、並びかえ検定を行うことにしました。並び変え検定の結果、i (店舗紹介からの経過週数) に対するp値の推移は図のようになります。


# 平均値の並び変え検定におけるp値の推移
permutation_list = list()
p_list = list()
for i in range(len(rate_mean_p_list)):
    p_list.append(0.05)
    if rate_mean_p_list[i] < 0.05:
        permutation_list.append(i+1)
        
plt.plot(rate_mean_p_list)
plt.plot(p_list, color = "red")
plt.xticks([0, 1, 2, 3, 4, 5, 6], [1, 2, 3, 4, 5, 6, 7])
plt.show()
print("平均値が有意差を持つデータは")
print(permutation_list)

図より、店舗紹介から2, 3, 4週間後の期間における予約人数増加率の増加は有意であると言えます。また、この図は、「予約記入日」
に注目した場合のp値の推移ですが、「予約来店日」に注目した場合のp値の推移は図のようになります。


# 平均値の並び変え検定におけるp値の推移
permutation_list = list()
p_list = list()
for i in range(len(rate_mean_p_list)):
    p_list.append(0.05)
    if rate_mean_p_list[i] < 0.05:
        permutation_list.append(i+1)
        
plt.plot(rate_mean_p_list)
plt.plot(p_list, color = "red")
plt.xticks([0, 1, 2, 3, 4, 5, 6], [1, 2, 3, 4, 5, 6, 7])
plt.show()
print("平均値が有意差を持つデータは")
print(permutation_list)

「予約記入日」に注目した場合でも、「予約来店日」に注目した場合でも、どちらも、2, 3, 4週間後の予約人数増加率の増加は有意であると言えます。以上の結果から、店舗紹介によって、店舗紹介から2, 3, 4週間後の期間において「予約記入」が増加し、その結果「予約来店」が増加したと言えそうです。検定結果のこの解釈をより強固なものとするために、今回分析対象となった予約データの「予約記入日」の属する週番号と「予約来店日」の属する週番号の間の差 (即ち、予約を入れたから実際に来店するまでの時間差 ) について調べてみます。分析対象となった各データについて、[予約来店日] – [予約記入日]を計算し、ヒストグラムを描くと図のようになります。


# 予約週と同じ週に来店する割合が約80%となっている
plt.hist(df_focused_rsv["rsv_gap"].values)
plt.show()

print(str(len(df_focused_rsv[df_focused_rsv["rsv_gap"] == 0])/len(df_focused_rsv) * 100) + "%")

図から、ほとんどの予約において、「予約記入日」と「予約来店日」は同じ週番号に属していることが分かります。その割合は8割ほどです。この結果から、検定において見られた、店舗紹介から2, 3, 4週間後の「予約来店」の増加は、同期間に対応する「予約記入」の増加によるものであると結論できます。

店舗紹介から1週間後の期間において有意な予約人数の増加が見られなかった理由は、放送を視聴してから店舗に予約を入れるまでのスケジュール調整時間によるものであると思われます。放送を視聴して店舗に好意的な態度を形成しても、すぐに仕事の都合をつけたり、友人との予定合わせを行ったりすることは困難なのではないでしょうか。また、店舗紹介から5週間後以降において有意な予約人数の増加が見られなかった理由は、店舗紹介による正の効果が逓減したからであると解釈できます。

5. まとめ

株式会社エム・データの所有するTVメタデータ (番組による店舗紹介データ) と株式会社トレタの所有 するデータ (店舗データと予約データ) を組合わせて分析することで、番組による店舗紹介が消費者の予約行動に与える影響を調査しました。その結果、店舗紹介によって消費者の予約行動は増加し、来店人数が増加することを統計的に示すことができました。来店人数の増加が有意である期間は番組放送から2, 3, 4週間後の 期間であり、このことから、番組による店舗紹介の効果は1ヶ月程度であると言えます。また、放送から1週間以内など、超短期的な集客を見込んで店舗紹介を行っても効果が得られないと言えます。番組による店舗紹介を行う場合には、このような効果発現期間を意識して放送内容を組み立てると良いでしょう。

 

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野村 将来
この記事を書いた人

東京大学大学院経済学研究科修士2年
マーケティングサイエンスの研究に従事する傍ら、トレタにてデータサイエンスの研鑽に励む。

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